Vol.5 オークションレポート / 2026年1月のサマリー
Vol.5 オークションレポート / 2026年1月のサマリー
──アートを「感性」で終わらせない。資本と思想の構造を読み解く。
Art Insightでは、作品の背後に潜む市場構造・評価軸・時代精神を掘り下げます。
美術史と金融、哲学とテクノロジーが交差する領域で、
「価値とは何か」を問う知的探求がここから始まります。
読むたびに、世界の見え方が変わる。
思考の精度を高め、自らの審美眼を資産化する旅へ。
「知識に投資することこそ、最高の利息を生む。」
― ベンジャミン・フランクリン
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【オークション レポート】では、国内外のアートオークション動向をいち早くレポートし、アート市場の趨勢を捉え、投資の参考とすることを目的としています。
1. アメリカ合衆国独立250周年関連で活況
例年であれば、閑散となる1月のアート市場ですが、今年は例外的に話題の多い月となりました。昨年秋からの好調の流れは2026年も継続していると判断できそうです。
2. オークション会社別レポート
クリスティーズ - アメリカーナ・ウィークが好調
アメリカ独立250周年を記念し「アメリカーナ・ウィーク」と題された計9回のオークションにおいて、678点の作品が出品され、総取引額は約1億4912万ドルとなりました。
なかでも最も高い落札額となったのがフレデリック・レミントン(Frederic Remington, 1861-1909)の油彩画《Coming to the Call》で落札予想額(エスティメイト)USD 6,000,000-8,000,000に対し、中央値の約2倍となるUSD 13,285,000(約21億円)での取引となりました。
また興味深い出品としては、ジミー・カーター元大統領(Jimmy Carter, 1924-2024)の描いた《Steeple(尖塔)》がエスティメイトUSD 6,000-8,000に対して、中央値の29倍となるUSD 203,200(約3,200万円)で落札されています。
一連の好結果を受けて、クリスティーズ・アメリカ社長のジュリアン・プラデルズ氏は次のように述べています。「クリスティーズ史上最大のアメリカーナ・ウィークは、満員のギャラリー、熱狂的な入札、そして興奮のエネルギーをニューヨークにもたらしました。700点近くの素晴らしい作品が、アメリカ建国250周年の幕開けに華を添えることができたことを誇りに思います。」
フレデリック・レミントン 《Coming to the Call》
(クリスティーズ ウェブサイトより)
ジミー・カーター 《Steeple》
(クリスティーズ ウェブサイトより)
サザビーズ:建国関連の資料が出品
サザビーズもアメリカ独立250周年を記念し、「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」と題しいくつかのオークションを実施しました。独立戦争時代から南北戦争、そして20世紀に至るまでのアメリカの歴史を辿る直筆の手紙、原稿、印刷物が出品されました。
なかでも注目を集めたのは、ジョージ・ワシントン(George Washington, 1732-1799)がベンジャミン・フランクリン(Benjamin Franklin, 1706-1790)に宛てた自筆書簡で、エスティメイトUSD 1,000,000-1,500,000に対し、USD 1,016,000(約1.6億円)での落札でした。ほかにも建国の父の一人で初代財務長官アレクサンダー・ハミルトン(Alexander Hamilton1755-1804)らが執筆した論文集《ザ・フェデラリスト》の初版がエスティメイトUSD 120,000-150,000に対し、USD 317,500(約4,900万円)で落札されました。

ジョージ・ワシントンの書簡
(サザビーズ ウェブサイトより)
その他のオークション
その他で目を引いたのは、国内で開催されたSBIアートオークションで、1月24日,25日に開催された「Modern and Contemporary Art」と題されたオークションにおいて、日本のオークションとしては珍しい10億円超えの総取引額を記録しました。個別作品のなかでは引き続き草間彌生がオークションの主役となっており、原画の《無限の網》が1億円超え、複数の《かぼちゃ》が6,000万円前後で落札されました。草間彌生の作品が安定して高額落札されている点は、アート作品が「高い換金性(流動性)」を持っていることを意味します 。特筆すべきは小松美羽の人気で、立体作品《山犬様 振り返り》がエスティメイト3,000,000-5,000,000円に対し、落札額は12,075,000円でした。ここのところ小松作品はエスティメイトを大幅に上回る落札が続いています。これは現在の市場価格と実需に乖離があることを示唆しており、投資向きのアーティストであると考えています。
小松美羽 《山犬様 振り返り》
(SBIアートオークション ウェブサイトより)
3.アート投資のための考察
年末年始、つまり12月と1月のオークションは、入札者の数が減ることもあり、各オークションハウスも目玉作品の出品を控える傾向にあります。しかし、今年は「アメリカ独立250周年」にあたることもあり、クリスティーズもサザビーズも記念オークションを実施し好調なパフォーマンスを記録しました。これらは単なる祝賀ムードの結果ではなく、歴史的裏付けのある作品が、強固なオルタナティブ資産として再評価された結果と言えます。
世界のアート市場は、記録的な取引額となった昨年11月以降堅調に推移しているとみられていますが、その上昇気流が継続的か確認するためにも2月および3月初旬に開催されるオークションの動向が重要です。
なお、2025年において以下の3つの潮流が観測されており、この流れは当面続くものとみています。
① 中東アートのプレゼンス拡大
② 女性アーティスト/コレクターの躍進
③ 世界的浮世絵ブーム
世界的インフレ傾向が継続している状況下、資金の流れが金や不動産に流れる動きが顕著となっています。この流れのなか、インフレ防衛の手段のひとつとしてアート作品を資産として保有する動きも見られます。欧米の富裕層は資産の5%をアート作品で保有しているといわれています。
今後は上の①~③を意識しつつ、資産となりうるアート作品を増やしていきたいところです。
