Vol.6 アート投資のセオリー / オークションの仕組み

Vol.6 アート投資のセオリー / オークションの仕組み

Vol.6 アート投資のセオリー / オークションの仕組み

──アートを「感性」で終わらせない。資本と思想の構造を読み解く。

Art Insightでは、作品の背後に潜む市場構造・評価軸・時代精神を掘り下げます。
美術史と金融、哲学とテクノロジーが交差する領域で、
「価値とは何か」を問う知的探求がここから始まります。

読むたびに、世界の見え方が変わる。
思考の精度を高め、自らの審美眼を資産化する旅へ。

「知識に投資することこそ、最高の利息を生む。」
― ベンジャミン・フランクリン

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 アートオークションと聞くと、映画のワンシーンのような、オークション会場で次々と作品の画像が映し出され、それを入札者たちが手にした札(パドル)を掲げ金額を競り合い、オークショニアと呼ばれる司会進行役がそれらを仕切っていく光景を思い浮かべる人が多いと思います。「ダヴィンチ幻の絵500億円 史上最高額、NYで落札」「葛飾北斎の”重要美術品”が6億円で落札」というようなニュースを目にすることもあり、オークションというと高額な取引ばかりなされているような印象があるかもしれません。

しかし、実際のマーケットはより多様であり数万円で落札される作品も多くあります。
前回書きましたが、2024年12月に文化庁が公表したデータによると、日本のオークション取引全体のおよそ半分が1,000ドル(約14万円)未満の作品です。

アート作品がオークションで取引され、作品が落札者の手元に届くまでには、様々な段階がありますが、そのプロセスをステップごとにひも解いていきましょう。


オークションの準備:カタログという名の「美術書」

 オークションハウス(主催会社)は、まず開催日とテーマを決めます。
 テーマとは、そのオークションで取り扱う作品のジャンルなどのことですが、それらは現代アート、ジュエリー、ワインなどの様々で、〇〇さんのコレクション、などの名目でオークションが開催されることもあります。また、ジャンルを決めずにすべてのアート作品を取り扱うオークションが開催される場合もあります。開催日については海外のオークションハウスでは曜日に偏りはないようですが、日本の場合は土曜日や日曜日などの週末に開催されることが多くなっています。

開催日とテーマが決まれば次は出品の準備です。これは大きく2つの工程があります。

・査定とエスティメイト

 預かった作品の状態や来歴を精査し、落札予想価格(エスティメイト)を算出します 。

・カタログの作成
 出品が決まると、作品画像、サイズ、鑑定書の有無、解説などを網羅したカタログが作成されます。これは単なる目録ではなく、それ自体が質の高い美術資料としての側面も持っています。カタログの内容は多くの場合ウェブサイトでも見ることができます。

下見会:作品価格がついている入場無料の美術館

 オークション開催前の数日間に下見会(プレビュー)とよばれる作品展示会が開かれることがあります。下見会は入札を検討しているオークションハウスの顧客が作品を実際に見てコンディションなどをチェックすることを目的としており、通常は誰でも無料で入場可能です。下見会では個々の出品作品においてアーチスト名、作品名、そしてエスティメイトを記載した札がつけられています。アンティーク食器や彫刻などを実際に手に取ってみることもできます。そして、その場にいるオークションハウスのスタッフに、作品の解説を聞くことができます。

 私はアートオークションの下見会を「作品価格がついている入場無料の美術館」と呼んでおり、日本だけでなく海外のオークションハウスの下見会にもよく行きます。特に2大オークションハウスと呼ばれるサザビーズやクリスティーズの下見会はピカソやレンブラントなど巨匠と呼ばれるアーティストの作品が展示されていることもあり、それらを間近で見て専門のスタッフにいろいろ質問したりしています。特にエスティメイトについてその根拠や傾向などについても質問できることは美術館にはない下見会の魅力だといえます。

オークションハウスの下見会 (筆者撮影)

オークション当日:リアルタイムで形成される市場価格

 オークション当日は、カタログにつけられたロット(作品)番号順に競りがはじまります。入札の方法としては、オークション会場に来てパドルを上げる、電話を使用する、事前に上限入札額をオークションハウスに通知しておくなどがありますが、近年ではインターネットのライブ中継をみながら入札するオンライン入札が増えています。

 多くの場合はエスティメイトの値幅の中で落札価格が決まりますが、人気の作品についてはエスティメイト上限を超えて競りがなされることもあります。オークションハウスは取引の場所を提供するところなので、株式などが取引される証券取引所と比較されることがありますが、株式とは異なりストップ高などの値幅制限がないので、エスティメーションの上限の数倍の水準で落札価格が決まることもあります。

 一方で、入札者がまったくない作品については、不落札となり作品は出品者に戻されます。なお、オークションの入札には手数料はかかりませんが、落札した場合は落札者がオークションハウスに通常、落札価格の15~30%の手数料を支払います。


オークションの様子 (筆者撮影)

オークション終了後:精算から作品の受け取りまで

 オークションが終了すると、通常その翌日に個々の作品の落札価格がウェブサイトなどで公表されます。出品者や落札者の名前は公表されません。落札者はハンマープライスと呼ばれる落札価格に手数料等を加えた金額をオークションハウスに支払った後に、作品を受け取ります。作品は郵送、直接引き取りのいずれも可能です。出品者は落札の代金が支払われた後に、売却代金を受け取ることになります。

 前回、オークションを中心とするセカンダリー市場はマーケットにおける需要と供給で価格が決まると書きましたが、落札価格も広く公表されるため、オークションは透明性が高いマーケットであるといえます。

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