Vol.8 オークションレポート / 2026年3月のサマリー
Vol.8 オークションレポート / 2026年3月のサマリー
──アートを「感性」で終わらせない。資本と思想の構造を読み解く。
Art Insightでは、作品の背後に潜む市場構造・評価軸・時代精神を掘り下げます。
美術史と金融、哲学とテクノロジーが交差する領域で、
「価値とは何か」を問う知的探求がここから始まります。
読むたびに、世界の見え方が変わる。
思考の精度を高め、自らの審美眼を資産化する旅へ。
「知識に投資することこそ、最高の利息を生む。」
― ベンジャミン・フランクリン
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【オークション レポート】では、国内外のアートオークション動向をいち早くレポートし、アート市場の趨勢を捉え、投資の参考とすることを目的としています。
1. 全体 - アートバーゼル香港に合わせたオークションが好調
2026年3月の主要アートオークションは、香港を中心に市場の力強い回復を印象づける結果となりました。Sotheby's・Christie's・Phillipsの3社が初めてオークション日程をアートバーゼル香港に合わせて集中開催し、Christie'sは全ロット落札のホワイトグローブを達成。特筆すべきはSotheby'sでのジョアン・ミッチェル作品がアジアにおける女性作家の最高落札額を更新したことです。またニューヨークではアニメ・マンガ専門オークションが初開催されるなど、若年層取り込みへの動きも加速しました。高品質な作品への需要が確実に戻りつつあるようです。
2. オークション会社別レポート
サザビーズ - アジアにおける女性作家の最高落札額を更新
3月4日にロンドンで開催されたサザビーズの「Modern & Contemporary Evening Auction」は、出品作品がすべて落札されるホワイト・グローブを達成する快挙となりました。このオークションでは、フランシス・ベーコン《自画像》が16,035,000ポンド(約33.7億円)、ルーチョ・フォンタナ《Concetto spaziale (空間概念)》が9,825,000ポンド(約20.7億円)などが落札されている。このオークションはアメリカ/イスラエルによるイラン攻撃の数日後に開催され、活発な入札が難しいのではという予想もありましたが、実際は極めて堅調な結果となりました。
3月29日にアートバーゼル香港に合わせて開催された「The Hong Kong Evening Sales」ではさらに勢いが増し、2025年3月に開催された同種のオークションと比べて合計で50%以上の落札額となる、548,421,200香港ドル(約112億円)を記録しました。このオークションでは、ジョアン・ミッチェル《La Grande Vallee VII》が137,350,000香港ドル(約28.1億円)で落札され、アジアにおける女性作家の最高落札額を更新しました。

28億円で落札されたジョアン・ミッチェル《La Grande Vallee VII》
(サザビーズ ウェブサイトより)
クリスティーズ- ヘンリー・ムーア、カンディンスキーに高額落札
3月5日に開催された「20th / 21st Century: London Evening Sale」において総額1億1,418万ポンド(約240億円)の取引があり、前年を52%上回りました。なかでもヘンリー・ムーア《King & Queen》がエスティメイト10,000,000-15,000,000ポンドを大幅に上回る26,345,000ポンド(約55.4億円)で落札され、同アーティストの最高落札額を更新しました。他にも、ワシリー・カンディンスキー《Le rond rouge》が、12,545,000ポンド(約26.5億円)、パブロ・ピカソ《Le peintre et son modele》が8,520,000ポンド(約18億円)で落札されています。ロット件数で92%となる高落札率であり、著名アーティストの良品には需要の高いことを示しました。

ヘンリー・ムーア《King & Queen》の入札風景
(クリスティーズ ウェブサイトより)
なお、クリスティーズでは3月18-31日に「Anime Starts Here: Japanese Subculture Reimagines Tradition (アニメはここから始まる:日本のサブカルチャーが伝統を再解釈)」と題したオンラインオークションが開催されました。ここでは、高瀬好山の超絶技巧金工作品、「となりのトトロ」や「AKIRA」のポスター、そして「ドラえもん」のセル画などが出品されており、人気を博していました。

クリスティーズで出品されたドラえもんのセル画 (2,000ドルで落札された)
3.アート投資のための考察
中東情勢の混迷にもかかわらず、3月のオークションが極めて好調であったことは、アート市場の回復を強く印象付けるものとなりました。サザビーズのホワイト・グローブ達成やクリスティーズの前年比52%増加の取引はそれらを裏付けています。また、アートバーゼルに合わせて開催された、フィリップス等が香港で実施したオークションにおいても好調が伝えられており、アジア市場の力強さも確認できました。
一方で、高額落札は、フランシス・ベーコン、ヘンリー・ムーア、草間彌生など著名アーティストに集中しており、コレクターが値上がりよりも安定した資産としてアート作品を保有しようとする傾向が見てとれます。
市場は調整局面を終え、真に価値のある作品が正当に評価される「質」の時代へと完全にシフトしたと見なすことができます。
