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Vol.3 アート投資のセオリー / アート市場の仕組み

Vol.3 アート投資のセオリー / アート市場の仕組み

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──アートを「感性」で終わらせない。資本と思想の構造を読み解く。

Art Insightでは、作品の背後に潜む市場構造・評価軸・時代精神を掘り下げます。
美術史と金融、哲学とテクノロジーが交差する領域で、
「価値とは何か」を問う知的探求がここから始まります。

読むたびに、世界の見え方が変わる。
思考の精度を高め、自らの審美眼を資産化する旅へ。

「知識に投資することこそ、最高の利息を生む。」
― ベンジャミン・フランクリン

以下、Membership限定記事(期間限定公開中)

2本の柱 - プライマリー市場とセカンダリー市場

アート作品が取引される市場は2種類あります。
それはプライマリー市場セカンダリー市場です。

 プライマリー市場は、アーティストが制作した作品が最初に販売される場で、いわゆる新作販売のことです。ギャラリー、百貨店、アートフェアがその舞台となることも多いのですが、アーティスト本人から直接購入する場合もプライマリー市場に含まれます。
プライマリー市場は一次市場と呼ばれることもあります。

 セカンダリー市場は、プライマリー市場で販売された作品が、転売される場のことです。
多くの場合、オークションでの売買が該当しますが、ギャラリーが作品を買い取り・再販売することでセカンダリー市場の役割を果たすこともあります。セカンダリー市場は二次市場とも呼ばれます。

 アート投資の観点では、購入した作品を将来売却し、利益を得ることが目的となります。そのためには、現時点、もしくは将来的にセカンダリー市場(つまり、オークション)で取引される可能性のあるアーティストの作品を選ぶことが重要です。以下では、それぞれの市場について詳しく説明します。

プライマリー市場

 プライマリー市場では、作品の売り手が販売価格を決めます。具体的にはアーティストとギャラリーが協議して決めます。価格設定ではアーティストの経歴や人気、そして過去の実績を考慮して決められます。ここでいう過去の実績には、受賞歴や展覧会歴が含まれますが、影響が大きいのはこれまでの売買価格です。アーティストとギャラリーは過去の売買価格を基準にして人気がでてきていると判断すれば強気の価格を設定します。すでにオークションで取引されているアーティストの場合、落札価格は新作の販売価格に大きく影響します。

 なお、作品の売却代金は両者の関係性にもよりますが、アーティストとギャラリーで半分ずつ折半することが多いようです。ギャラリーが受け取る割合が大きいように感じる方もいるかもしれませんが、ギャラリーは、個展の開催やアートフェアへの出品、そしてSNSを通じたプロモーションなど、多くの時間と費用を投じてアーティストをサポートしています。これは私たちがイメージするタレントと芸能事務所の関係に似ているのかもしれません。

 アーティストがコレクターに直接販売する場合もプライマリー市場に含まれますが、その際はアーティスト自身が価格を決めます。ギャラリーに所属していないアーティストの場合、作品に込めた思いが反映されすぎて割高になるケースもあります。また、ギャラリーが発行する「販売証明書」などがないと、将来の転売時に不利になる可能性があります。アーティストを応援する目的で作品を直接購入するのであれば問題ありませんが、投資目的の場合は、慎重に判断することをおすすめします。

 余談ですが、日本画家の作品の販売価格の決定は独自の慣習があります。日本では作品サイズを「号」で表す習慣があり(例:1号の場合長辺が22センチ、10号だと53センチ、100号だと162センチ)、多くの場合「号あたりの価格」で販売価格が決まります。「号」あたり数万円が目安で、画家の経歴や日本画壇での地位が反映されます。日本芸術院の会員など、画壇で高い評価を受けている画家は価格が高くなる傾向があります。

 画家の情報を調べるには株式会社経済界が発行する『美術市場』という冊子が便利です。そこには現役画家の経歴や「号」あたりの価格が掲載されています。2024年版によると、日本画家は170人が掲載され、「号」あたりの価格は8万円から200万円まで様々です。このなかで100万円を超えている画家は千住博、田渕俊夫、福王子一彦の3名で、いずれも日本芸術院の会員です。

セカンダリー市場

 セカンダリー市場では、市場の需要と供給によって価格が決まります。具体的にはオークションにおける取引が価格を決めるのです。アート作品のオークションというと、映画などで目にするような、豪華なオークション会場で次々と作品の写真が映し出され、それを入札者たちが手にした札(パドル)を掲げ金額を競り合い、オークショニアと呼ばれる司会進行役がそれらを仕切っていく光景を思い浮かべる人が多いと思います。「ダビンチ幻の絵500億円 史上最高額、NYで落札」(2017年11月16日 日本経済新聞電子版の見出し)というようなニュースを目にした方も多いかもしれません。

 最近では葛飾北斎の肉筆画が6億円で落札されたり(11月8日 東西ニューアートオークション)、DIC川村記念美術館が所有していたモネの《睡蓮》が70億円で落札されたり(11月17日 クリスティーズ)といったニュースも話題になりました。

 こうしたニュースを見て、オークションというと高額な作品の取引という印象を持たれるかもしれませんが、実際は数万円~数十万円の取引が多くあります。2024年12月に文化庁が公表したデータによると、日本のオークション取引全体の「およそ半分が1,000ドル(約14万円)未満の作品」です。
 また、オークションは「アート関係者や富裕層だけが参加するもの」という印象を持たれがちですが、実際にはオークション会社に登録すれば誰でも参加できます。作品を自由に鑑賞できる「下見会」は、私が“作品に値段がついている入場無料の美術館”と呼んでいるほど魅力的な場ですので、機会があればぜひ訪れていただきたいと思います。

クロード・モネ 《睡蓮》 が落札された瞬間のオークション風景
(クリスティーズ 公式Youtubeより)



(文化庁:The Japanese Art Marketより)

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