Vol.11 オークションレポート / 2026年5月
Vol.11 オークションレポート / 2026年5月
──アートを「感性」で終わらせない。資本と思想の構造を読み解く。
Art Insightでは、作品の背後に潜む市場構造・評価軸・時代精神を掘り下げます。
美術史と金融、哲学とテクノロジーが交差する領域で、
「価値とは何か」を問う知的探求がここから始まります。
読むたびに、世界の見え方が変わる。
思考の精度を高め、自らの審美眼を資産化する旅へ。
「知識に投資することこそ、最高の利息を生む。」
― ベンジャミン・フランクリン
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【オークション レポート】では、国内外のアートオークションの動向をいち早くお伝えし、アート市場の趨勢を捉えることで、投資判断の一助となることを目的としております。
1. 17人のアーティストにおいて過去最高落札額を記録
アートオークション業界では5月の半ばが大手オークションハウスが、その年で最も重要かつ最高価格帯の作品を集中して出品する「マーキーウィーク(Marquee Week)」と呼ばれています。「マーキー(Marquee)」には「最高級の」「大看板の」という意味があり、まさにアート市場の主役(看板)となるイブニング・セール(夜間競売)や主要なデイ・セール(昼間競売)が1〜2週間の間に一挙に開催されることになります。
今年のニューヨーク・マーキーウィーク(5月13〜21日)は、大手3ハウス合計でおよそ18.5億ドル(約2,930億円)規模となり、2022年以来最大の盛り上がりを見せました
2. オークション会社別レポート
サザビーズ - 前年比2倍以上の取引額
5月14日にニューヨークで開催された「Robert Mnuchin: Collector at Heart Evening Auction」と題された個人コレクションから出品されたオークションでは、マーク・ロスコ(Mark Rothko, 1903-1970)の《Brown and Blacks in Reds》が、85,780,000ドル(約135億円 手数料込み 以下同じ)で落札されました。
また、同日に同じ場所で開催された「The Now & Contemporary Evening Auction」では、バスキア(Jean-Michel Basquiat, 1960-1988)の《Museum Security (Broadway Meltdown)》が52,717,500ドル(約83億円)で落札されました。他にも、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)やウィレム・デ・クーニング(Willem de Kooning, 1904-1997)において高額落札が相次ぎ、サザビーズは1日で合計4億3,300万ドル(約684億円)の取引額を記録しました。これは前年5月の現代アートの取引額1億8,610万ドルの2倍以上となりました。
なお、このオークションでは西村有(1982-)《Leaves carpet》が出品されており998,400ドル(約1億5,800万円)で落札され、同アーティストの過去最高額を更新しました。西村は2025年5月にメガギャラリーのひとつであるデヴィッド・ツヴィルナーに移籍しましたが、それ以降オークションでの落札価格が急上昇しています。
1億5800万円で落札された西村有《Leaves carpet》
(サザビーズウェブサイトより)
クリスティーズ- 過去最高の14.5億ドル(約2,302億円)の取引額
ニューヨークのロックフェラーセンターでの下見会で2万人を超える来場者があったことも大きな話題でしたが、ふたをあけてみると、マーキーウィークの総取引額は14億5,350万ドル(約2,302億円)に達し、同社最高の取引額となりました。
取引拡大を牽引したのがジャクソン・ポロック(Jackson Pollock, 1912-1956)の横幅3メートルを超える大型作品《Number 7A》と、コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi, 1876-1957)の彫刻作品《Danaïde》で、それぞれ181,185,000ドル(約288億円)と107,585,000ドル(約171億円)で落札されました。これらはともに、アーティストの過去最高落札価格を更新しました。

約288億円で落札されたジャクソン・ポロックの《Number 7A》のオークション風景
(クリスティーズ ウェブサイトより)
その他
その他で目を引いたのは、5月19日にフィリップスで開催された「Modern & Contemporary Art Evening Sale」で、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)《Sixteen Jackies》が16,225,000ドル(約26億円)、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932-)《Besen》が8,070,000ドル(約13億円)で落札されるなど高額取引が相次ぎ、1日で1億1,520万ドル(約183億円)の記録的な取引額となりました。。
日本のオークションでは、SBIアートオークションが5月22日・23日に開催した「Modern and Contemporary Art」と題されたオークションで取引総額10億円を超えたことが注目されます。1億円超え(106,950,000円)となった草間彌生《揚子江のさゞなみ》、87,400,000円で落札された李禹煥《From Point》など知名度の高いアーティストの作品が取引を牽引しました。

26億円で落札されたアンディ・ウォーホル《Sixteen Jackies》
(フィリップス ウェブサイトより)
3.アート投資のための考察
2026年5月のニューヨーク・マーキーウィークは、3大オークションハウス合計で約18.5億ドル(約2,930億円)という、2022年以来最大規模の取引額を記録しました。ジャクソン・ポロックの約288億円、コンスタンティン・ブランクーシの約171億円、マーク・ロスコの約135億円と、超高額帯では記録更新が相次ぎ、市場の底力を示す週となりました。
一方で、国内市場でも注目すべき動きがありました。SBIアートオークションが総額10億円超を記録し、草間彌生・李禹煥といった国際的な知名度を持つ作家への需要が国内でも確実に根付いていることが確認されました。
超高額帯での記録更新、国内市場の底堅さ、そしてフィリップスが前年比2倍超の取引額を叩き出したことが示すように、アート市場への参加者の裾野は着実に広がっています。「最高品質の作品には世界中から買い手が集まる」という市場の原則は、2026年の春においても健在でした。
次の山場は6月のアート・バーゼル(バーゼル)です。世界中のギャラリーと収集家が一堂に会するこの場での活況が、今年後半に向けてさらなる追い風となることを期待したいと思います。
