Vol.13 オークションレポート / 2026年7月

Vol.13 オークションレポート / 2026年7月

Vol.13 オークションレポート / 2026年7月

──アートを「感性」で終わらせない。資本と思想の構造を読み解く。

Art Insightでは、作品の背後に潜む市場構造・評価軸・時代精神を掘り下げます。
美術史と金融、哲学とテクノロジーが交差する領域で、
「価値とは何か」を問う知的探求がここから始まります。

読むたびに、世界の見え方が変わる。
思考の精度を高め、自らの審美眼を資産化する旅へ。

「知識に投資することこそ、最高の利息を生む。」
― ベンジャミン・フランクリン

以下、Membership限定記事(期間限定公開中)

【オークション レポート】では、国内外のアートオークションの動向をいち早くお伝えし、アート市場の趨勢を捉えることで、投資判断の一助となることを目的としております。

1.  オークションより決算が注目を浴びた月

 2026年7月のオークション市場は特に目立ったものはりませんでしたが、ザビーズ、クリスティーズが相次いで2026年上期の業績を発表し、ここ数年間の調整局面からアート市場が明確に回復しつつあることが数字の上で確認されました。

2. オークション会社別レポート

クリスティーズ - 古書が高値で落札 

 7月のクリスティーズでは大規模セールは開催されませんでしたが、7月8日にロンドンで開催された「Valuable Books and Manuscripts Including Cartography」の落札総額は1,270万7,879ポンドとなり、複数出品者構成の古書・写本オークションとしてクリスティーズ・ロンドン史上最高額を記録しました。トップロットは13世紀後半制作の彩飾写本《The Clermont-Tonnerre Grail》で、224万6,000ポンド(約4.9億円)で落札されました。

【決算発表】
 クリスティーズは7月15日、2026年上期の総売上が45億ドルに達したと発表しました。オークション売上は35億ドルで前年同期比71%増となりました。プライベートセールも10億ドルを超え、上期として過去最高となりました。落札率は前年の87%から91%に上昇し、ハンマープライスのローエスティメイトに対する比率も115%から124%へ改善しました。


約4.9億円で落札された13世紀後半に制作された彩飾写本
(クリスティーズ ウェブサイトより)

サザビーズ - 恐竜も化石に81億円

 7月1日にロンドンで開催されたサザビーズのオールド・マスター関連セールで、1817年制作のブロンズ彫刻《The Hamilton Laocoön》(アンティークの写し、高さ約234cm)が手数料込み1,360万ポンド(約18.1百万ドル、約29.3億円)で落札されました。エスティメイトは200万~300万ポンドで、落札価格は上限の約4.5倍となりました。同種の等身大ブロンズ鋳造は世界に4点のみとされ、150年ぶりの市場登場でした。

 7月14日、ニューヨークに出品されたティラノサウルスの化石標本「Gus」が5,010万ドル(約50.1百万ドル、約81.2億円)で落札され、恐竜化石のオークション最高記録を更新しました。それまでの最高記録は2024年に4,460万ドルで落札されたステゴサウルス「Apex」で、Gusはこれを約560万ドル上回りました。

【決算発表】
 サザビーズは7月14日、2026年上期の連結売上が44億ドルとなり、前年同期比58%増、上期として過去最高を記録したと発表しました。オークション売上は34億ドルで前年比59%増、プライベートセールは8億2,600万ドルで52%増(過去最高)となりました。落札率は90%で少なくとも2010年以降で最高、落札ロット1点当たりの平均入札者数も過去最高の4.9人に達しました。


約81億円で落札されたティラノサウルスの化石
(サザビーズ ウェブサイトより)

3.その他
 7月10日、11日に第82回SBIアートオークション「Modern and Contemporary Art」(会場:ヒルサイドフォーラム、東京都渋谷区)が開催されました。原文記事によりますと落札総額は6億5,708万7,000円(2025年7月の同種オークションは6億3,753万1,250円)で、3.1%の増加とされています。

4.アート投資のための考察

 2026年7月は、アート市場の回復が明確な数字として示された月でした。大手3社(サザビーズ、クリスティーズ、フィリップス)の上期オークション売上は合計で約70%増加し、2022年以来の高水準に達しています。

一方で、今月とりわけ高い価格が付いたのは、約150年ぶりに市場へ現れた彫刻、世界的なコレクターが所有していた作品、博物館級の恐竜化石など、明確な希少性と物語性を備えた対象でした。
市場は回復しています。しかし、回復しているからこそ、作品間の格差もまた一段と明確になっています。優れた作品は世界中の買い手を集める一方、平均的な作品まで自動的に値上がりするわけではありません。

7月の結果は、アート市場の基本原則を改めて示したものと言えるでしょう。

お問い合わせはこちら 詳細を表示する

Related Items
関連アイテム

Your Curated History